←その1
S「…Mさん。」
M「どうした?」
Tくんが帰ったあと、SさんはMさんと話をしていました。
S「まずは、すみませんでした。
自分たちのことに夢中になって、周りのこと考えていませんでした。」
M「お前はもういい年なんだから…」
S「ええ、気をつけます。自分がうまく導いてあげるべきでした。
ですが…」
M「…」
S「さっきのあれは…」
あれ、とは先ほどのMさんの言葉です。
M「俺はただやめろ、と言っただけだ。別にSやTを責める意図はない。」
D「(いや、でもさっきの言葉どこか…いらつきがあった気がするぞ。)」
二人の会話を聞いていたDさんは心の中でそうつぶやいていました。
S「そうですが…。でも、あの言葉で傷つく人だって…。」
M「それは、Tの心の問題だ。」
S「…別にTとは言ってませんが。」
M「Tに限らず、人の言葉に傷つく人は心が弱いからだ。」
S「…」
それは心が弱いのではなく、繊細なんです。
そういう人がいるから「言葉に気をつけなさい。」と先生はおっしゃっていたじゃないですか!?
そう言おうと思っていたSさんですが…。
S「(ダメだ…このまま話したら、Mさんを責めてしまう。
それは、主の願うことじゃない…。)」
口に出すことをためらっていました。
M「…もういいか?
俺は休むぞ。明日も仕事だからな…。」
その間にMさんはリビングから出て、自分の部屋に戻っていきました。
D「Sさん…。」
S「D、お前も休めよ。明日の明け方のこともあるからな…。」
D「どうして、Mさんに言葉のこと言わなかったんですか?」
S「どんなに御言葉が正しいとしても…。
いや、これはDが祈って悟ってくれ。」
そういって、Sさんも自分の部屋に戻っていきました。
D「…」
Sさんの言葉を聞いて、ただ一人Dくんは祈っていました。
———————————
T「おはようございます。」
S「おう!」
次の日。TくんはSさんと一緒に練習するために家に来ました。
T「あの…昨日はすいませんでした。少し練習が長引いてしまったから…」
S「Mさんのことは気にしなくていいよ。
あれは家の住人である俺がちゃんと考えるべきだった。すまん。」
T「そんな…Sさんが謝ることでは。」
S「…昨日のことはもう気にすんなって!」
そう笑いながらTくんの背中をバンバン叩くSさん。
T「…はい。」
Tくんも笑っていました。
しかし…やはりそのことを引きずっているようです。
S「よし!それじゃあ、今日も練習するぞ!
もう芸術祭本番まで時間がないからな!」
T「そうですね!やりましょう!」
S「よし、それじゃあ、昨日の続きから…」
———————————
S「それじゃあ、二人で合わせるぞ。」
T「はい。いつでもどうぞ。」
S「…1,2,3,4!」
昨日と同じようにSさんはギター、Tくんはピアノを弾きます。
S「ストップ。」
しかし、演奏が始まってすぐにSさんは演奏を止めます。
T「…どうしましたか?」
S「T、どうした?
音が少し散漫だぞ。」
昨日の優雅な、それでいて心情が流れるような演奏とは違って、少し音が乱れていたTくんの演奏。
T「…すいません。もっと集中します。」
S「時間もないし、気を引き締めるぞ!
もう一回だ。」
T「はい!」
そういって、もう一度演奏を始めるTくんたちですが…。
S「ストップ。まだ音が乱れてる。」
T「…すいません。
どうしたんだろう…こんなにうまくいかないなんて。」
まだ、Tくんの音は安定しません。
そのことで、Tくんは少し焦ります。
S「T…まだ昨日のこと気にしてるんじゃないか?」
T「そんなこと…ありませんよ。」
Sさんは笑って話しかけますが、Tくんの反応はいまひとつ。
昨日のことを気にしているのは、見て明らかです。
S「…」
T「さあ、もう一度やりましょう。もう時間が…」
S「休憩だ。
外に出よう。」
そして、Tくんは急いで練習を始めようとします。が、それを遮ってSさんが外に出ようとしていました。
T「え?あの、もう時間がないのですが…」
S「いいから!散歩しに行くぞっ!」
T「あ、ちょっと!」
SさんはTさんの肩を抱きながら、強引に散歩に連れて行きました。
→その3
この記事を書いたブロガー
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「素直に、深く、面白く」がモットーの摂理男子。霊肉ともに生粋の道産子。30代になりました。目指せ数学者。数学というフィールドを中心に教育界隈で色々しています。
軽度の発達障害(ADHD・PD)&HSP傾向あり。
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