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【数学小説】真理の森の数学セミナー~積分編①~

<2/5編集 最初の積分計算ミスしてました。こちらのチェックミスです。>


 

「…あー、積分の計算めんどくせぇ」

とある大学の数学教室。そこには二人の男子がいました。
机でノートを開いて計算している一人は「ディー」と皆に呼ばれ、それを見ているもう一人を「数正(かずまさ)」といいます。

「工学部なら、数学の計算は基本。
それを身につけるのだから、計算が多いのは仕方ないだろう」

「…そうだけどよ、それにしても多すぎだろ。
数学科のお前ならあっという間に出来るんだろうけどよ」

「それは偏見だ。数学科でも計算が遅い人は遅い。
まぁ、計算が苦になる人は数学科に入ったら苦労するけど」

「ったく、積分の計算なんてどこで…と、お!?」

ぶつくさ言いながら計算していたディーはある問題を見て声を上げました。

「ん?どうした?」

「いや、この問題”公式”使えば楽勝だなって思って」

その問題とはこういうものです。

   

「これは積分の中身を因数分解して…」

   


「と、こんなもんだ!いや、ラッキーだ!ちょっと楽できたぜ!」

「あぁ…受験テクニックの一つだな」

楽できたことを喜んでいるディーを見ながら、どこか冷めたように数正がつぶやきました。

「なんだ?こんなもん数学でない、って言いたいのか?」

「いや、そんなことは思っていないが…。
ただ、”公式”はあくまで計算テクニックであって、そんなものを覚える必要はないって思っただけだ」

「なんだよ、計算が苦でないやつはいいよな!
俺みたいな計算嫌いにとってはありがた…」

「何やってるの?」

と、そこに一人の女子大生が話しかけてきました。

「うわぁ!?いきなり来るなよ!ビックリするじゃねぇか!?」

「…さっきからいたけど。
貴方達が気付かなかっただけでしょ」

「ディーが計算してる!何してるの?」

彼女の側にはもう一人女性がいました。
彼女の名前は「アキ」、彼女は教育学部の一年生です。

「アキもいたのか。
これは授業の宿題だよ」

「えー!ディーが宿題してるなんて…」

「いや、俺だって宿題するわ!」

「何言ってんのよ、小学生の時夏休み宿題しないでずっと遊んでいたくせに…」

「小学生の時のことをいつまでも言ってんじゃねぇー!」

アキとディーは子供の頃からの幼馴染です。
そのため、こんな感じでいつも話しています。

「…計画性がないな。
ああいうのは7月中に終わらせておいて、あとは自分の好きなことをするものだ」

「真面目君だな、お前」

「ちなみに、数正くんは宿題を終わらせて何をしてたの?」

「そんなの」

さも当然かのように、数正は

「数学の本を読んでいたに決まってるだろ」

そう言い切りました。
そう、数正は数学が好きで小学校の時から数学の本を読む「数学マニア」でした。

「…はぁ、これだから数学オタクは…」

「なんだ、その言い方は!?」

「いや、もっとあるだろ!虫取りとか海行ったりとか…」

「そんなのより、数学の方が楽しい」

「数正くんはすごいなー」

呆れたディーと感心したような様子のアキ。
そんな対話をよそに、もう一人の女子大生は、ディーのノートを見ていました。

「…この計算、積分ね。
最後のこれは…」

「あ、あぁ…”公式”を使ったんだ」

「”公式”…」

「なんだよ、真理も知らないのか…」

その女性は「真理(まり)」と言います。
彼女も数学科の一年生です。

「”公式”ってのは、こういうやつさ」

   

「ふぅん…これって」

その公式を見ながら、真理は

「どうして成り立つの?」

そんなことを尋ねました。

「…へっ?」

「いや、だから、この公式は、どうして成り立つの?」

「そんなの…成り立つからに決まってるからじゃねぇか!?
成り立つから公式になっているのであって…」

「はぁ」

そんなディーの解答にため息をつく真理。

「むぅ…数正は分かるのかよ!」

「…左辺を計算すればいい」

そういって、数正は黒板に向かいました。

「アキは、積分の計算分かる?」

一方、真理はアキに尋ねました。
アキは少し悩みつつ答えました。

「あ、うん。一応計算くらいなら…」

「そう、それなら…」

この4人はどうしてここに集まってきたのでしょうか?
彼らは工学部、教育学部、理学部数学科と学部も違うのに…。

彼らは「SSS」というサークルです。
数正が「数学を一緒に勉強する人」を探すために作ったサークル。
その条件は「数学が好きな人、興味のある人」だけ。
そこに「文系だけど数学に興味がある」アキと、「もっと数学出来た方がいい!」と彼女に連れてこられたディー、そして真理が集まって、今のようになっています。

彼らの活動は、とてもシンプル。
「数学を深く学ぶ」こと。
「最先端の数学を理解する」ために、様々な問題を取り上げ、時に議論し、計算し、解説しながら、その問題の背景にある「数学」の世界を歩くのです。

その活動は…

「今日は、積分にしましょうか」

真理の一声で決まります。

SSS-「数学好きによる数学セミナー」

またの名を…「真理の森の数学セミナー」

彼女たちの「森」の探索が、今日も始まります。


積分編②

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この記事を書いたブロガー

sato
「素直に、深く、面白く」がモットーの摂理男子。霊肉ともに生粋の道産子。30代になりました。目指せ数学者。数学というフィールドを中心に教育界隈で色々しています。
軽度の発達障害(ADHD・PD)&HSP傾向あり。
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