-昔々、ある所に、一人の農夫さんがいました。彼は手に多くの種を持っています。
今日はおひさまが出ていて、暖かな春日和。そう、彼は畑に種を蒔きに来たのです…-
「よーし!大きな木になるぞー!」
「いや、それよりも僕は美味しい実を沢山結ぶんだ!」
農夫の手に耳をすませば、手に持っている種たちが話をしています。
彼らはそれぞれ育った後の姿を考えながら、期待に胸を膨らませます。
「…お前、ホント小さいよな!」
「しかも、シワシワで、変な形!」
その中で、一粒の種が周りからいじめられていました。彼は他の種よりひときわ小さく、シワシワで、ちょっと不思議な形をしていました。
「…うぅ…僕だって、こんな姿で生まれたかったわけじゃ…」
小さな種も自分の姿を見て落ち込んでいました。
「ったく、そんなんで本当に育つんかいな!」
「お前は食べられてしまえば良かったんじゃないか!?」
そんな姿を見て、ますます悪く言う種たち。
「…」
小さな種は、何もいえませんでした。
自分の姿に自信が持てず、自分の良さもわからず…。
「やー…」
悪口の声が遠ざかります。悪口を言う種も、そして、小さな種も空中に放り出され…土深くに植えられました。
—————————-
おひさまが強く照らす、ある時。
農夫さんの畑にはいくつもの芽が出ていました。中には双葉が出ているところもあります。
そんな中…
「…おい、今日も生えてねーぞ」
小さな種のところは芽が出ていませんでした。
「おい、どうしたんだよ!お前も水をもらっているんだろ!」
「土だって栄養たっぷりだぜ!お前もたくさんもらっているんだろ!」
そんな小さな種に、変わらず悪口を言い続ける他の種たち。
「うぅ…僕だって…少しずつ変わっているんだよ…」
そんな悪口に、精一杯の声で答える小さな種。
「よかった、枯れてたんじゃないんだ…」
そんな小さな種を見て、心配したり同情してくれる種もいますが…
「やーい、のろま!お前も悔しかったら、早く成長してみせろー!」
多くの種たちはこぞって悪口を言います。
ところで、農夫さんはどうしているでしょうか?
ずっと芽を結ばない種を見て、諦めてしまったでしょうか?いいえ、そうではありませんでした。
彼はいつも皆に水を与え、雑草を抜き、肥料を与えていました。もちろん、小さな種のところにも。
毎日、毎日、どんなに暑くなろうとも…。雨が降った時も、種が流されていないか見回っていました。
そんな農夫さんの行ないを受けて…小さな種も
「…眩しい…これが、おひさまか…」
やっと芽を出しました。
—————————-
カァー!カァー!
「うわっ!またカラスが来たよ!」
「あいつ、ホントしつこいなぁ…」
おひさまが輝く夏の暑い日。種はいつしか若木となり、中には枝を茂らせるものまでいました。
そんな中…
「やっぱり、小さいよな、お前」
「…」
小さな種も若木となりましたが、皆より少し小さかったのです。さらに…
カァー!カァー!
「うわっ…!!」
小さな種、いや小さな若木に何故かカラスがいつも襲いかかっていました。
それを追い払う農夫さん。
「はぁ…お前のせいで、俺達まで怖い思いをするだろ!」
「お前はどうしていつもそうなんだ!」
「そんなの知らないよ…どうしていつも僕ばかり…」
周りの声を受けて、落ち込む小さな若木。
「どうして僕は、小さいし、育つのが遅いんだろ?
どうして僕は、変な形なんだろう?
どうして僕にだけカラスがいつも襲いかかってくるんだろう?」
小さな若木には疑問がいっぱいでした。
「はぁ…僕は、本当に蒔かれてよかったのかな?」
そんな疑問も浮かぶ、彼の前には…
カラスを必死に追い出し、小さな種から守る農夫さんの後ろ姿が見えました。
—————————-
「…暑い…」
おひさまがカンカン照りの夏の日。水も乾いてしまう、大変な暑さです。
「…はぁ…もういいや…」
「え?」
小さな若木の前にいた木がそうつぶやきました。見ると、葉っぱもシワシワで今にも枯れてしまいそうです。
「もう、いいや。俺は諦めるよ」
「ダメだよ!せっかくここまで育ってきたのに…」
「でも、次にいつ水が来るんだよ…いつもの水じゃ足りないんだよ…」
不満を告げる木。どんどん枯れていきます。
「もうすぐ、もうすぐ雨だって降るよ!」
「…そんなの…待ってられるかよ…こんなつらいの…もうゴメン…」
「あ…」
そういって、目の前の木は完全に枯れてしまいました。
「…」
それを見つめる小さな若木。
—————————-
「うぅ…」
暑さがさらに続く、夏の日。
小さな若木も苦しんでいました。
「……うぅ…」
葉っぱも力なくうなだれています。
(「こんなつらいの…もうゴメン…」)
かつての枯れてしまった木の言葉が浮かんで、生きる力を失いそうになります。
「…」
しかし、小さな若木はなんとかこらえていました。それは…
暑い中、毎日毎日水をやり、害虫から守ってくれる農夫さん。
彼も汗をダラダラ流しながら、毎日木たちの手入れをしていました。
いつも、暑い中水をくれる農夫さん。
いつも大変だけど、一つ一つの葉を見て害虫がついていないかを見る農夫さん。
いつも襲いかかるカラスから守ってくれる農夫さん。
「…農夫さんのためにも…」
そんな農夫さんを見て
「最後まで…がんばろう…」
小さな若木は最後まで生きようとしていました。
と、それまで晴れていた空が急に暗くなりました。空を見上げる農夫さんは、どこか嬉しそうでした。
ポツ。ポツ。
「あ…」
小さな若木の葉っぱに、水滴が当たります。
その水滴はどんどん多くなり、いつしか雨になっていました。
「やったー!久々の雨だ!」
「よかったー!もうすぐ枯れてしまうところだったよ」
喜ぶ木々たち。
「今のうちに…たくさん水を…」
小さな若木も水をいっぱい吸って、元気になりました。
—————————-
暑かった夏も過ぎ、段々と涼しくなってきました。
木々の中には花を咲かせ、実を結んだものもいました。
「どう?綺麗な花でしょ?」
「俺のこの実を見なよ!とても美味しそうだろ!」
皆がお互いの自慢をしています。そんな中…。
「お前…まだ実を結んでねーの?」
「というか、花も咲いてないじゃん」
小さな若木…といってももう小さくもないし、若木でもないのですが…彼は立派に成長したけど、まだ花を咲かせていませんでした。しかも…
カァー!カァー!
「痛っ!」
相変わらず、カラスに襲われていました。
「ホント、どうしてお前はそんなにカラスに襲われるんだろうね?」
「ボロボロだし…」
葉や枝は無事なものの、幹はカラスにたくさん突かれてボロボロでした。
「農夫さんにも、見捨てられたんじゃねーの!?」
「お前、ほんとにノロいからな~」
そんな姿を心配するどころか、さらに悪口を言う周りの木たち。でも…
「…痛いけど、もう大丈夫だ。倒れることはない…」
彼は、気に留めませんでした。
「農夫さんは今まで僕を守ってくれた。僕がちゃんと育つように、最後まで世話をしてくれた。
あとは、僕が育つ番だ!」
農夫さんに対する愛が揺らぐことなく、彼は育っていました。
「…でも、僕がまだ花を咲かせられないのは…はぁ」
でも、自分がまだ花も咲かないことがとても悔しそうでした。
そんな彼を見ながら、
農夫さんは、笑っていました。
—————————-
そして、秋も深まった収穫の時。
「…ふぁ~、良く寝た…」
朝日が差して、起きた木々たち。
「って、あれ!?」
そこで見たのは…大きな樹となった「小さな種」。
「でっかぁ…」
しかも、ただ大きいだけでなく、黄金の、立派な実をたくさん結んでいました。
「マジかよ…」
「とても…いい香り…」
周りの木たちがいろいろ話しているのを見ながら、一人「小さな種」は思います。
「そうか…どうして僕が小さく、変な形だったのか、分かった気がする。
もっと水を吸って、できるだけ地中に深く埋まって、深く根を張るためだったんだ。
そうやって、最後にたくさん栄養を吸うためだったんだ。
どうして、僕がずっとカラスに襲われていたのかもわかった。
カラスにとって、僕の香りはとても美味しそうだったからなんだ。そして、カラスに幹を突かれたけど、その分たくさん回復して、幹が丈夫になった。
そして、日照りだった分、丈夫に育って…あぁ、全てはこの時のためだったんだ…」
そう、皆より小さな種だったのも、変な形にも、カラスに襲われたことも、日照りも、全てに意味があったのです。それを「小さな種」はやっと分かったのです。
「本当に…最後までやって良かった…」
とても嬉しそうな「小さな種」。そこに、実を獲ろうと農夫さんがやってきました。
「農夫さん!今まで僕を守ってくれてありがとう!
これからは毎年秋になる度、僕がたくさん実を結んで、あなたを喜ばせますね!」
農夫さんと、「小さな種」は笑っていました。
—————————-
Kさんは脇に子供を抱えながら、物語を読み聞かせていました。子供は、ワクワクしながらKさんを見つめています。
K「小さな種はどうして自分が小さいのか、育つのが遅かったのか、たくさんわからないことがあったの。
でもね、最後に大きな樹になって実を結んだら、全部分かったのよ。このようにね…」
ゆったりと流れる時間。聖霊様もその場所に居て、二人を微笑ましくご覧になっています。
K「最後まで神様と聖霊様と御子を信じて、愛して、神様の御言葉を聞いてやってみたら、
わからなかったことも、
神様の思いも、
間違っていたこともすべて分かって、
それまで得られなかったことも得るようになるのよ」
子供はその言葉にウンウンと頷いていました。
ちょっと難しい話のようにも思えますが…
K「途中カラスにたくさん襲われたり、日照りにあったみたいに、最後まで行くのはとっても大変。
でもね、最後まで行ったら<それまで頑張ったご褒美>を神様がくださるの。だから、大変でも最後まで頑張ろうね~!」
はーい!と元気よく返事する子供ちゃん。とっても可愛いですね(^^)
K「大変なときは神様のこと、主のことを考えてね。
神様は最後のあなたの姿をご存知なの。だから、神様はたとえ自分がうまくできないと思っていても、何度も躓いたとしても、絶対見捨てないで、最後まで愛して、助けてくださるのよ。その姿を見て、『小さな種』のように、がんばろう!」
元気よく返事をしながら、とても嬉しそうな子供ちゃん。
神様の愛を見て、とても嬉しそうです。
この子供もまた、小さな種。そして、私達も。
生きる中で色々な苦労があるでしょうし、よくわからないこと、つらいこと、苦しいことにも出くわすでしょう。
時には、神様の愛を感じられず、苦しくなることだってあるかもしれません。誤解やすれ違いもあるでしょう。
それでも、最後までやった時に、甲斐も感じ、苦労した対価を得るようになります。
そして、最後までやった時に「本当の自分、本当の愛、本当の神様」に出会えます。
神様は、私達の真の価値をご存知です。
だから、神様はいつも私達を助け、守り、いつもそばで愛してくださっています。でも、私達が分からないから諦めもするし、落胆したり、怒ったり、不満を漏らしてしまいます。
そんな私達を見て、神様はいつもドキドキハラハラ…ちょっと、申し訳ないですよね?
神様が私達を見て心配なさらないようにするためには…
三位が心配なさらないようにするためには、最後までやらなければなりません。
最後までやってこそ、疑問も誤解も解け、損をしたものも得ます。
2015年もあと僅か。今年を悔いなく生きましょう!
この記事を書いたブロガー
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「素直に、深く、面白く」がモットーの摂理男子。霊肉ともに生粋の道産子。30代になりました。目指せ数学者。数学というフィールドを中心に教育界隈で色々しています。
軽度の発達障害(ADHD・PD)&HSP傾向あり。
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