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最近読んでいる論文の話

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おはようございます、satoです。

昨日の記事で、私は論文を片手にW杯を観戦している話をしましたが(笑)
本日は最近読んでいるこの論文の話をしていきたいと思います。
完全に数学好き向けの話なので、ご注意ください…。

『絶対数学』とGeneralized Ring

現在私が読んでいる論文は、Nikolai Durovの「New Approach to Arakelov Geometry」というものです。
arXivでも読むことができます。arXivは科学論文のプレプリントが掲載されているプレプリントサーバです。

この論文を読んだきっかけは絶対数学と呼ばれる数学研究について知ったことです。
この『絶対数学』というのは日本の数学研究者黒川信重教授らが提唱したもので、一言で言うと

一元体と呼ばれる数学的対象についての研究

です。この一元体というのは未解決問題である「リーマン予想」や京大数理研の望月新一教授が一部解決した「ABC予想」に関連して考えられている「仮想の数学的対象」です。
仮想の、というのはまだ明確な定義がされていなく、こういう性質を満たす数学的対象が存在する、と考えられている(信じられている?)段階だからです。

よって、「一元体」と呼ばれるものはいくつかあり、その一つが黒川教授提唱の「吸収元(零元)付きモノイド\{0,1\}」というものです。
他にも様々なものが存在していて、私が現在読んでいる論文にもこれが出てきます。

「ABC予想」は足し算と掛け算の関係についての予想、と考えられていて、これまでの数学は「足し算と掛け算」という2つの演算を持つ「環(ring)」を中心として研究されていました。特にGrothendieckによるScheme理論によって可換環論と代数幾何学が融合、それまでの理論が一新・深化された結果リーマン予想の非特異代数多様体類似であるWeil予想が解決されました。

ところで、このWeil予想の証明法のアナロジーを(リーマン予想は整数環のゼータ関数に関する予想なので)整数環で行おうとするとうまくいかないのですが、それは整数環が全ての環の基本であるからなのです。
これを見ながらより根源的な対象が存在すると考え、提唱されたのが『絶対数学』、というわけです。

私が現在読んでいるのはDurovの論文ですが、どうしてこれに注目したのか、というと

Generalized、つまり「一般化された」環というものに可能性を感じた、というのが一つと、感覚的には黒川教授の「モノイド」にも通じるものがある感じた

からです。
このGeneralized ringというものの定義は、用語でいうと「代数的モナドで、各演算が可換であるもの」ということです。
これについて(自分の理解を整理する意図も含めて)もう少し解説していきたいと考えています。

参考文献

『絶対数学』については黒川教授による啓蒙書が出版されています。興味のある方は

黒川信重、小山信也著『絶対数学』

等をお読みくださると気持ちが分かります。

 

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