数学における人工知能と人間の共存について

おはようございます、satoです。

前回、前々回に引き続き「人工知能」について語ります。
昨日は四色定理等の話を中心に、現在の数学における人工知能の果たしてきたことについて書きました。
今日はそれを踏まえて、これから人工知能が出来ること、出来ないこと、そして人工知能と人間の共存について書いていこうと思います。

人工知能ができそうな事

昨日も書きましたが、現在のコンピュータはある論理体系によって成り立っている証明を行うことができるまでになりました。その背景には「記号によってパターン化された理論」というものがあります。
このように、数学の問題には「記号化されたパターン」というものが多くあります。

そして、このようなパターンを見つけることも、数学には出来るのではないか?というのが私の感覚です。
そこには囲碁ソフトにも使われた「ディープラーニング」という技術が使われるのではないか、ということです。
あれは「一定のルールに基づいて繰り返し計算することによってより成功率を上げる方法を学習する」というものですが、これをたとえば「こういうルールに基づいて最小手数で計算する」というように使って、パターンを見つけることが出来るのかな、と思います。
または「大量の計算結果」をストックして、ある計算結果から似たようなパターンを探してくれる、というのもありですね。画像検索みたいな。
このように、具体的な計算例からパターンを見出したり、パターン化された問題を解決することは人工知能には出来そうです。

人工知能が苦手なこと

反面、人工知能では難しい問題も多くあります。
その中でも代表なのが無限に関する問題です。
数学にはその定義の中に「無限、限りなく行うこと」が入っているものもあります。例えば、有理数でない実数は循環しない小数なので、本当にパターンがありません。
なので、こういったものを使うためには「有限のもので定義する(例えば多項式に置き換えるとか)」か、「有限小数による近似値」で行うしかありません。
実際、sin1も正確な値を出すことが出来ません。コンピュータで出てくる値は「テイラー展開」による多項式での近似を用いたものです。

このような実数の問題が出てきた場合…例えば「全ての実数でこれが成り立つ」という問題はコンピュータだけでは今のところ難しいのではないかと思います。
計算するにしても、人間がその方法を使うしかありません。同様に、「すべての実数でこれが成り立つ」とかも難しいかと思います。

もう一つ難しい…というか、これは決定的に人工知能には出来ないことだろう、と思うのは数学の計算結果から深い理論を「作り出す」ことです。
仮に、多くの計算結果からパターンを見出し、その定理を出したとして、その証明が「計算のパターンから見いだせない」場合もあります。
その最たる例が「フェルマーの最終定理」です。この定理は3以上の自然数nに対して「x^n+y^n=z^nを満たす自然数の三つ組は存在しない」ということが成り立つ、というものです。
昔は個々の自然数の場合で証明されていったのですが、その証明方法はバラバラで一般化することは出来ませんでした。
最終的には1995年に証明されたのですが、その背景には「楕円関数論」と「保型形式」を結ぶ谷山志村予想が隠されていて、その証明にも多くの数学の理論が使われていました。
コンピュータに計算させることによって幾つかのパターンは見いだせるかもしれませんが、そこから証明に必要なこれらの理論が発見されるのか、というと私はそうならないと考えています。

人工知能と人間の共存について

以上のことから、数学の分野において「人工知能と人間が共にする」形はこういうものでないかな、と考えています。
ある問題があって、人工知能の能力で大量に計算し、その結果からパターンを見出す。一方、人間はコンピュータが計算できる形に問題を整理し、コンピュータが与えた結果を通して「背景にある深い理論」を作る。

コンピュータとはちょっと違いますが、ラマヌジャンとハーディの研究がこれに近いです。

ラマヌジャンは大量の計算から独自の「公式」を発見し、それをハーディが証明していく。

その背景にはとても深い理論があり、それを別の数学者が作り出す。(今でもラマヌジャンの結果から深い理論の端緒が出てくるそうです)

結局のところ、人工知能はあくまで「人間の使う道具」である、と私は思います。
少なくとも数学の発展においてはコンピュータが大きな役割を果たすとしても、最終的に「理論を作る段階」は人間が行うことになります。
これと同じように、たとえ人工知能が多くの人間の仕事を出来たとしても、「人間の生活、精神の次元を上げる」ことは人間にしか出来ないのではないか…、そしてそこにこそ人間の本質があるのではないか、とこの考察から思いました。

この記事を書いたブロガー

sato
「素直に、深く、面白く」がモットーの摂理男子。霊肉ともに生粋の道産子。30代になりました。目指せ数学者。数学というフィールドを中心に教育界隈で色々しています。
軽度の発達障害(ADHD・PD)&HSP傾向あり。