高校数学から一歩先へ~数列と関数はそっくりさん?~

おはようございます、satoです。

最近仕事で数列の漸化式を扱っています。
この数列の漸化式には色々なパターンの解法がありますが、実際に問題を作って解いていくと楽しいです。
ところで、この漸化式、実は微分方程式とは結構関係があるのです。

この話をしたいので、今回は「数列」と「一変数関数」について色々話していこうと思います。
内容自体は高校数学の範囲ですが、今回は高校数学では教えない(時間なくて教えられない、とも)内容をまとめてみます。

数列と関数の関連性

そもそも数列とはどういうものだったかというと…

1,2,3,4,5,\ldots1,2,4,8,16\ldots

というように、数字を一列に並べたものです。1,2,3,…番目の数字を第一項、第二項、第三項、…と書きます。第一項は特別に初項といいます。

    \[a_1,a_2,a_3,\ldots,a_n,\ldots\]

という数列があった場合、これを\{a_n\}と書きます。

高校の授業では数列の一般項を求めることが一つの目的とされていますが、これはa_nnの式で表すことです。

ところで、この数列というのをよくよく考えると

自然数1,2,3…を初項、第二項、第三項…の数字に対応させたもの

になります。つまり\{a_n\}という数列は

    \[\{a_n\}:\mathbb{N}\ni n\mapsto a_n\in\mathbb{R}\]

という「自然数全体を定義域とする」関数と考えることができます。

こう考えると、私達が習ってきた一変数(実数値)関数

    \[f:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}\]

と数列はとても似ているということが分かります。

たとえば、「等差数列」とは「隣同士の項の差が一定」であるような数列です。
a_n=3n-1という数列は初項が2、第二項が5、第三項が8、…というように次の項に行くたびに3ずつ増えていきます。
これは等差数列の一つなのですが、この増え方、実は中学生のときにやった「1次関数」の表でも出てきます。
このことから等差数列と1次関数にはなにか関連性がありそうですが、実際に

・等差数列は「隣り合う2つの項の差が一定」、1次関数は「変化の割合が一定」という関連性がある。

・等差数列の一般項はnの一次式(a_n=an+b)、1次関数はy=ax+b

というような相似性が見られます。

差分と微分

先程等差数列でも出てきましたが、数列において重要な概念が「隣り合う2つの項の情報」です。
これは先程の「自然数全体を定義域とする」関数としての考え方でいうとn+1のときとnのときの変化量を調べたことになります。

一変数(実数値)関数について調べる際に大事な考えが微分です。
微分とは関数の「瞬間の変化率」を求めることです。定義を書くと

    \[\lim_{h\rightarrow0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\]

が収束するとき、この収束値が「微分係数」、これを求めることが微分の目的です。

この微分の定義をよく見ると、瞬間の変化率の意味がわかります。
まず、\limの右側にある数式は「xhの分変化させたときの変化の割合」です。
このh0に限りなく近づける、というのが\lim_{h\rightarrow0}の意味です。
このことから微分係数の定義は「aのごく近くの点との変化の割合」ということがわかります。

この関数における微分に相当するのは数列では何でしょうか?
微分が「aのごく近くの点との変化の割合」であることから、同じように「nに一番近い点との変化の割合」を考えます。
数列は「自然数全体を定義域としている」ので、nに一番近いのはn+1n-1です。
そこで、この変化の割合を計算すると…

    \[\frac{a_{n+1}-a_n}{n+1-n}=\frac{a_{n+1}-a_n}{1}=a_{n+1}-a_n\]

となります。これは…「隣り合う2つの項の差」ですね。これを差分といいます。
関数にとっての微分とは数列にとっては「差分」、つまり「隣り合う2つの項の差」です。

また、「微分係数」を対応させる関数を「導関数」と言いました。
「導関数」は関数の性質を調べる上でとても重要な関数(ex.関数の極大・極小、変化の仕方等がわかる)なのですが、同じように「差分」を対応させる数列もとても重要です。これは「階差数列」ですね。

ちなみに、先程「等差数列」と「1次関数」の対応を書きましたが、今までの言葉を使うともっと明確に類似性が見えてきます。
等差数列→階差数列が定数の並ぶ数列
1次関数→導関数が定数関数

もう一つ「等比数列」と「指数関数」にも類似性があります。
「等比数列」は「隣り合う2つの項の比が一定」となる数列です。
この数列の一般項はaを初項、rを「隣り合う2つの項の比」とするとa_n=ar^{n-1}となります。
この一般項の形を見ると指数関数y=a^xと似ています。

指数関数の微分には特徴があります。それは導関数が元の関数と同じである、ということです。
具体的にはy=a^xの微分はy'=(\log a)a^xとなります。特にa=e(ネイピア数)とすると、y=e^xの微分はy'=e^xです。本当に同じ関数ですね。
一方、等比数列の階差数列を見てみると、

    \begin{eqnarray*} a_{n+1}-a_n&=&ar^n-ar^{n-1}\\ &=&ar^{n-1}(r-1) \end{eqnarray*}

と等比数列になります。
このように「等比数列の階差数列は等比数列」、「指数関数の微分は指数関数」という類似性があります。

というわけで、差分(階差数列)と微分(導関数)の話が出てきました。
次回は数列で出てくる「漸化式」と「微分方程式」の話をしていきますね。

この記事を書いたブロガー

sato
「素直に、深く、面白く」がモットーの摂理男子。霊肉ともに生粋の道産子。30代になりました。目指せ数学者。数学というフィールドを中心に教育界隈で色々しています。
軽度の発達障害(ADHD・PD)&HSP傾向あり。