おはようございます、satoです。
間が空いてしまいましたが、ブログを更新していこうと思います。
ちょっと作戦を変更してある程度精度が悪くても更新頻度を上げることにします。
というわけで、本日の話。
8/1からICM(国際数学者会議)が始まりました。8/9まで開催されて、現在も進行中です。
この初日に数学の各賞の受賞者が発表されました。
数学の賞として有名なものに40歳未満の数学者が対象の「フィールズ賞」がありますが、これを含め多くの賞がICMで決定されます。
・ガウス賞(数学以外の分野、特に社会生活における優れた数学的功績を立てた人に受賞される。ちなみに第一回の受賞者は日本人の伊藤清先生で受賞理由は「確率微分方程式による金融工学や経済学への貢献」です。)
・ネヴァリンナ賞(計算機科学(つまり、コンピュータ関連)における優れた数学的功績を立てた人に受賞される)
・チャーン賞(生涯にわたる群を抜く業績を挙げた数学者に贈られる)
そして、今回京大の柏原正樹教授が「チャーン賞」を受賞しました!
2010年から設立されまだ歴史は浅いですが、「生涯に渡って著しい業績を挙げた」数学者に贈られるチャーン賞を日本の数学者が受賞したことはとても大きいことと感じています。本当におめでとうございます!
ところで、受賞理由は「代数解析学の基礎の構築、及び代数解析学と表現論を結びつけた研究」(やや不正確かもしれません)です。
代数解析学、というのは佐藤幹夫先生が提唱した数学の理論です。(こちらの記事でも少し言及しました)
代数解析学は微分方程式を代数的に、より具体的には「行列」や「加群」を用いて研究するという分野です。
この導入の話として「微分方程式と接続の話」を書きました。
今回はもうちょっとだけ、代数解析学の説明を試みたいと思います。
目次 非表示
微分作用素
高校2年生はもう少ししたら習うかと思いますが、関数に対して微分という操作があります。
微分というのは、「関数の”ある点のごく近く”での情報を知る」ためのものです。
たとえば二次関数のグラフは放物線ですが、この放物線のある点の近くを見ると「真っ直ぐ」に見えます。
(グラフをある点の近くで拡大すると、「直線」に見える、というようなものです。
これは、「地球は丸いけど、私達が住んでいるところはほぼ平らに感じる」というのと同じです)
この「直線」はその点の接線なのですが、この接線の傾きの情報を知るときに、微分を使います。
その定義は教科書とか他のサイトを参考にしてもらうとして、ここでは次のことに着目します。
「ある関数に対して、微分という操作によって新しい関数(導関数)が得られる」
微分の記号として、ライプニッツが作ったというものがありますが、これを使うと
というように表せます。そこで、という記号を「で微分しますよ」という操作を表すものとして考えます。
こういった「関数から関数に移る操作」を表す記号を作用素といいます。特にを微分作用素といいます。
たとえば、
ならばです。
ならばです。
ならばです。
ならばです。
ところで、微分には次のような法則がありました。
前半は「関数の和を微分したものは微分してから足したものと同じ」、さらに簡潔に話すと「微分という操作は和を保つ」ということです。
後半は「関数の定数倍を微分したものは導関数の定数倍と同じ」、さらに簡潔に話すと「微分という操作は定数倍を保つ」ということです。
これらのことから、微分作用素は線形性(和と定数倍)を保つということが分かります。この「和と定数倍を保つ」というところから微分作用素を「線形代数(ベクトルと行列)の範囲で」考えるという話が生まれるのです。
この考えをもっと突き詰めたのが佐藤幹夫先生による「代数解析学」の話なのです。
代数解析学の中心にあるのは微分作用素と、それが作用する関数たちの集まり(D加群)なのです。
次回は「微分方程式」について書いてみようと思います。
この記事を書いたブロガー
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「素直に、深く、面白く」がモットーの摂理男子。霊肉ともに生粋の道産子。30代になりました。目指せ数学者。数学というフィールドを中心に教育界隈で色々しています。
軽度の発達障害(ADHD・PD)&HSP傾向あり。
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