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ポアンカレ予想を解いた数学者。

ポアンカレ予想を解いた数学者。

こんばんは、satoです。

前回に続き、純粋な数学者の話をします。
今日話す話は、つい最近の話で当時結構話題になりました。なので、数学に詳しくない人でもこの人のことは聞いたことがあるかもしれません。

ポアンカレ予想を証明した数学者

ポアンカレ予想というのは、数学における有名な未解決問題の一つでした。
トポロジーという数学の一分野の先駆者であるアンリ・ポアンカレが予想した図形に関する問題で

単連結な3次元閉多面体は3次元球面と同相である

というものです。
よく

「宇宙の中の任意の一点から長いロープを結んだロケットが宇宙を一周して戻って来たとする。
ロケットがどんな軌道を描いた場合でもロープの両端を引っ張ってロープを全て回収できるようであれば、宇宙の形は概ね球体である(ドーナツ型のような穴のある形、ではない)と言えるのではないか、
というのが(3次元)ポアンカレ予想の主張である」(ポアンカレ予想-wikipediaより引用)

という説明がされます。要するに「もし(閉じている)3次元空間の中にある輪っかを縮めてどこにも引っかからなかったら、空間には穴がない」ということです。宇宙というのは皆がイメージしやすい比喩です。
単連結というのが「図形の上の輪っかをどんどん狭めることができる」ことなので、このような説明がされています。
ちなみに、「半径1の円」が「距離が1となるような点の集まり」として書けるように、4次元空間の中で距離が等しいものを集めたのが3次元球面です。

さて、この予想はとても難しかったのですが、これを証明したのがグリゴリー・ペレルマンという数学者です。
彼はリッチ・フローという道具を統計力学的考察で精密に検証し、それを用いて「サーストンの幾何化予想」というもっと難しいものを示すことでポアンカレ予想を証明したのです。
ちなみに、サーストンの幾何化予想というのは簡単に言うと「3次元多様体(局所的には私たちが住んでいるような3次元空間になる図形)はある意味で8つのパーツに分けられる」というもので、その中で単連結、閉なものが3次元球面と同相なものしかないのでポアンカレ予想が示せるというわけです。
で、この8つのパーツを分けるときにハミルトンが開発したリッチ・フローという道具を使います。これが存在することはサーストンが示したのですが、問題は分解する過程で計算不可能な点を作りだしてしまうことがあるかもしれない、ということでした。
これをリッチ・フローの時間経過について調べたときにすべて回避できる方法がある、ということを示したのがペレルマンなのです。ちなみに、この証明には物理学的要素もあって熱量とかエントロピーという単語が論文の中にも出てきます。

名誉や賞金を拒否したペレルマン

ポアンカレ予想を証明したということ自体がすでに衝撃的、それも予想をしていなかった方法で証明したのでさらにそれが大きいペレルマンですが…。
実は、彼が有名になったのはそれだけではありませんでした。

ポアンカレ予想は「ミレニアム問題」と呼ばれる7つの大問題の一つでした。
ミレニアム問題というのは「21世紀の数学の発展を促すために」選ばれた未解決問題で、この問題を解決すると100万ドル(約一億円)を得ることができます。
といっても、賞金を目的として研究する人は滅多にいませんが…大きな目的は「こういう問題があるのか」と興味を持たせ、研究を促すことでした。
ちょうど、フェルマーの最終定理のことを本で読んで興味を示したアンドリュー・ワイルズがのちにこの問題を解決したように…。

この一つを証明したということは、言い換えると「賞金100万ドル」を得るということにもなります。
さらに、彼は40歳未満であったので「フィールズ賞」という数学の最高の栄誉となる賞を得る可能性もありました…というより、ほぼ確実でした。

実はペレルマン、過去にも有名な問題を(斬新かつシンプルな形で)解決していて、多くの賞を得ていました。
しかし、彼はその賞や賞金をことごとく辞退していました。なので、フィールズ賞やミレニアム問題の賞金を受け取るのか、とても注目されていました。

そして、2006年にペレルマンはフィールズ賞を獲得…したのですが、彼は受賞を辞退しました。余談ですが、ペレルマンに似たような気質を持つグロタンディークもフィールズ賞獲得には若干難色を示したのですが、彼は受け取りました。
また、2010年にペレルマンがポアンカレ予想を解決したことが認められ、ミレニアム問題の賞金を授与されたのですが…こちらも受け取りを辞退しました。

この理由について、ペレルマンは次のように話していました。

「自分の証明が正しければ賞は必要ない」

…なんという、数学バカ(´・ω・`)もちろん、褒め言葉です。
ペレルマンは名誉やお金より、数学という学問を純粋に愛していたのです。ゆえに、賞金には興味がなかったのです。
正直、これは信じられない…と言いたいのですが、2013年にABC予想を証明した論文を公開した京大数理研の望月新一教授も「フィールズ賞に間に合うことより自分の理論を完成させることを選んだ」とか「自分の論文を見て先を行ける人がいるなら歓迎する」と話していたので、「名誉、お金<<数学」という人は少なからずいるようです。

また、数学界の不公正さとか「ハミルトンに対する評価が十分でない」ということも話していました。
彼は「数学研究に対して著しい結果を出したならしっかり評価される」ことを願っていた、のかもしれません。この辺りもとても純粋な考えだなと思いました。
ちなみに、私が思うに数学は割と先取権争いは少ない方です。共著論文も「頭文字順」で名前が掲載されます。私を指導している教授曰く「少なからず何かしらの形で貢献しているから」なのだとか。
化学とか物理はこの先取権とか論文の名前の順番がとてもシビアと聞いています(´・ω・`)
ただ、グロタンディークも似たようなことは言っていましたから、やはり数学でも「正しい評価」というのをすることができていないのでしょうか…。

ポアンカレ予想の解決でマスコミに注目されたペレルマンですが、「数学以外は興味がない、というか数学以外は邪魔」くらいに思っているペレルマンにはとても大変だったのでしょう。
その後彼はロシアの研究所を離れ、数学から離れた…とされていましたが、さっきwikipediaを見たら「スウェーデンで研究をしている」とのことでした(*‘∀‘)
正直言うと、これはとても嬉しかったです。ペレルマンの「独創的な数学」を見られること、またその才能が埋もれてしまうのはとても残念なことですから…。

 

ペレルマンは数学にひたすら情熱を込めた人でした。
世の中の駆け引きとか、様々な事情を無視して、ただ純粋に数学に向かう人でした。
普通の人にはなかなかできない、名誉欲や金銭欲を切ること。
しかし、ペレルマンは「数学」に対する純粋な、本当に純粋な愛によって切るどころか初めから気にもしていなかったのです。
それゆえにどうやって生きてきたのか、苦労することも多かった気がしますが…

まさに、「脳の愛」です。
摂理にいて数学を研究するものとして、彼の姿勢はとても学ぶべきものだと思いました。

この記事を書いたブロガー

sato
「素直に、深く、面白く」がモットーの摂理男子。霊肉ともに生粋の道産子。30代になりました。目指せ数学者。数学というフィールドを中心に教育界隈で色々しています。
軽度の発達障害(ADHD・PD)&HSP傾向あり。

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