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【摂理人が書く物語】否定の目を閉じ、天の音を奏でる。その1

【摂理人が書く物語】否定の目を閉じ、天の音を奏でる。その1

ここはとある一軒家。北海道でも珍しい賃貸物件のこの家から…
~♪~♪
ピアノの音が。
どうやら賛美のようですが…。ちょっと中を覗いてみましょう。
D「…」
S「…」
リビングではDくんとSさんが座ってピアノの演奏を聞いています。
その視線の先には…。
~♬♪♩

Tさんがいました。
彼はピアノを弾き語る大学生。かつて音楽家を目指すためにひたすら特訓したその技術を使って、今は神様を賛美する使命をもらっています。(イメージとして、摂理 〜主に捧げるミュージックカフェ〜より、摂理の兄弟姉妹が実際に演奏したBGMをお聴きください。)
D「すげぇ…。なんていうか…すげぇ。」
その演奏に、Dくんは言葉が出ませんでした。
T「…ふぅ。」
演奏が終わって、二人は拍手をしていました。
D「Tさんやっぱりすごいっす!
なんていうか…賛美に込められた心情を表現できているというか、聞いてて主の姿が感じられました!」
T「ありがとう!そういってくれると嬉しいよ。」
TさんはDくんの言葉にはにかんで答えます。
S「いや、Tは本当に音楽の才能があるな。聞くだけで心を感動させられるなんてそうそうできることじゃない。もっと自信を持って良いんだぞ?」
T「いやいや、これは僕の力じゃなく主が備えてくださったものですから…。」
Sさんの言葉に謙遜に答えるTさん。
S「本当にいつも真面目だなぁ、Tは。」
T「そうですか?」
S「もっとはっちゃけていいんだぞ?」
Sさんがニヤニヤしながら話します。
T「いやいやいや…はっちゃけるってそんな…。そろそろ、練習しませんか?」
S「本当にTは真面目だなぁ…。ま、あんまり遅くなると色々問題もあるから、始めようか。」
そういうと、Sさんはギターを持ってTさんの隣に座ります。
S「えーと…楽譜は…」
T「これです。」
S「お、すまん。いつも気がきくな。」
T「いえいえ、そんな…。」
楽譜を持って、準備する二人。
そう、SさんとTさんは芸術祭の出し物でセッションをするのでした。今日はSさんたちの家でその練習、というわけです。
D「いや~、楽しみっす!」
Dくんはたまたま二人の練習を見に来た、というよりは聴きに来ただけです。実はDくんもここに住んでいるのです。
T「練習だから、まだそこまで出来は良くないよ?」
S「ま、出来が良くないのは俺の方だけどな。」
T「いやいや、誰もそんなこと言ってませんって!」
Sさんの冗談に慌てて必死に否定するTさん。
S「冗談…とも言えないぜ。Tの方はばっちりだからな。」
T「二人で合わせるとなれば色々弾き方が変わりますから、その調節はしないとですよ。だから僕の方もまだまだです。」
S「それは…これから調節すればいいだろ?」
T「そうですね。では…」
S「…1,2,3,4.」
Sさんの合図をきっかけに、二人が賛美を演奏します。
二人が弾くのは「偉大な摂理史」。
Tさんが勇壮に、雄大にピアノを弾き、Sさんは力強くギターを弾きます。
Sさんのちょっと荒削りだけど力と熱がこもったギター。
Tさんの精錬された、それでいて心情を熱くするピアノ。
二人の演奏が一つとなり…神様、聖霊様、御子の歴史、その偉大さを表現します。
D「…」
開いた口がふさがらないDくん。二人の演奏に圧倒されていました。
S「…ふ~!なんとか弾き切ったぜ!
正直弾くので精一杯で何にもできなかったわ。」
T「そうですね…。
まだまだ表現しきれていないところもありますよね。それにもっとうまく合わせないと…。」
S「そうだな。」
D「…いやいや、二人ともすごいっす。何にも言葉が出ませんよ…すごすぎて。」
これで未完成なんて…と心の中で思うDくん。
S「おいおい、これで言葉が出なかったら…本番はどうなっちまうんだ!」
そんなDくんを見て笑いながらそういうSさん。
T「そんな…わざわざハードルを上げなくても…。」
S「ん?Tはこんな演奏で満足なのか?」
T「そんなことは言ってませんよ!ただ、そこまで言う必要はないかなって…。」
S「T、俺たちは「天の作品」を目指そうとしてるんだぜ。
だから、もっと自負心を持て。」
T「…そうですね。もっと、自信を持たないといけないですよね。自分たちの演奏に。」
そういうTさんですが、どこか自信がなさそうです。
S「…よし、じゃもう少し調節するか。
T、俺の演奏を聞いて、直すべき所を教えてくれ。」
T「はい。わかりました。」
SさんはTさんの前でギターを弾き始めます。
——————————-
S「…ふぅ。色々話しているうちにもうこんな時間だ。」
T「結構盛り上がってしまいましたからね。」
二人が演奏を直しながら賛美の構成を考えて始めてから…気が付いたら3時間は経っていました。
S「最後にもう一回合わせようか。」
T「そうですね。お願いします。」
そういって、二人は再び演奏を始めます。
最初に演奏したものよりさらに息の合った演奏。
調和の美しさ。力強い演奏による雄大さ、そして…神秘さ。
神様が全ての万物に込められた要素が備わり、二人の演奏はいよいよクライマックスへ…!
M「おい。」
と、その時。
D「あ、Mさん。おかえりなさ…」
M「お前たち、少しうるさいぞ。
もう夜なんだから演奏をやめろ。」
会社から帰ったMさんが二人の演奏を止めました。
Mさんもここで一緒に暮らしているのです。
T「あ、Mさん。すいません!」
S「すんません。もう少しで終わりますので…。」
M「やめろ。
近所迷惑になる。」
S「…ここでやめるのは…」
T「すいませんでした。すぐにやめます。」
もう少しで完成しそうなときにやめたくない。
そう思ってMさんに話をするSさんですが、Tさんは慌ててピアノを片付け始めます。
S「T!」
T「Sさん、続きは明日にしましょう。これ以上ここでしても近所迷惑になりますし…。」
S「…それで、いいのか?」
T「まだ時間はありますから…。」
そうTさんは言いますが、実はこの時本番まであと三日。
二人とも大学4年生なので、いつでも時間が出せるわけではありません。
T「Mさん、この場所を使わせていただきありがとうございました。」
M「おう。気をつけて帰れよ。」
T「はい。それでは失礼します。Sさん、Dくんも、また明日。」
D「は、はい…。」
S「…。」
そして、Tくんはみんなの家を後にします。
しかしその顔には、どこか「自信のなさ」が見えるのでした。
→その2

この記事を書いたブロガー

sato
「素直に、深く、面白く」がモットーの摂理男子。霊肉ともに生粋の道産子。30代になりました。目指せ数学者。数学というフィールドを中心に教育界隈で色々しています。
軽度の発達障害(ADHD・PD)&HSP傾向あり。

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