ここは日本のとある大都会。そこには、仕事を熱心にするエリートがいた。彼の業績に、共に働いている社員の噂はいつも絶えない…。
「おい、あいつまた営業で新規契約とったってよ」
「まじかよ…あいつ今月だけで10件は契約とってるぞ」
「しかも、毎日残業して、土日も出勤しているらしいよ…」
「えー!それっていつ休んでるの?体持たないよ!」
「さすがに日曜は出勤しない。日曜はちゃんと運動して、好きなことして休んでる。健康でないと仕事できないからね」
「「「「あ!」」」」
噂をしている社員たちの前に、エリートよ雰囲気を醸し出す男が。そう、彼が噂のエリートだ。
「エリートさん、あなたはいったいどうしてそんなに働いているの?」
「将来のためさ。今の内にたくさん働いてお金を貯めておいて後は働かずにゆっくり過ごしたいからね。だから、今は食事とかのため以外はお金を使っていない。」
「ふーん…。そんなこと考えていたんだ。でも、それって楽しいの?」
「楽しいさ。将来ゆっくり過ごせることを考えると、今の仕事なんて苦にならない。」
「そうなんだ…でも。
そうやって生きてあなたが死んだら、いったい何が残るの?」
「死んだ後のことは知らないね。…おや、そろそろ時間だ。早く次の取引先にいかないと。」
「あ…」
次の契約をとってくるために外に出るエリート。それを見ている社員たち。
彼はこのようにして仕事に没頭してお金をどんどん稼いでいった。
その中で色々なこともした。接待、インサイダー取引、株…。彼の心は痛みすら感じず、ひたすらお金を稼ぐことに没頭する。すべては将来のため…。
そして。
「ふぅ…。ついに目標の10億に達した。これで…」
「あいつ、退社するってよ。会社はこの話で持ちきりだぜ」
「まじかよ!」
「何でも目標としていた10億に達したから、後はゆっくり過ごしたいってさ」
「社長も引き留めようとしたけど、決心は揺るがなかったらしいぜ」
社長の引き留めも振り払い、自由を得たエリート。会社を出て、一人車で帰路につく。
「ふぅ…。ここまで長かったけど、ようやく楽しみにしていた生活の始まりだ。私には死ぬまでに必要なお金がたくさん蓄えられている。さあ安心せよ、私の心よ。食え、飲め、楽しめ」
ー人間はいつ生きるか、いつ死ぬかはわからない。
一寸先の将来すら見えない。ー
「…うっ!胸が…少し働きすぎたか…まずい…意識が…」
ー愚かな者よ、あなたの魂は今夜のうちにも取り去られるであろう。そしたら…ー
「…!?」キキーッ!
ー…あなたが用意した物はだれのものになるのか。ー
「おい!エリートの乗った車が大型トラックと正面衝突したってよ!」
「どうやら即死だったみたい…」
「…あいつ、何のために働いたんだよ。せっかくお金をためてたのにそれを使えないんじゃ…」
「…あいつの人生、いったいなんだったんだろう…」
突然のエリートの死を悼む社員たち。
しかし、彼らは知らない。
これからエリートを襲う最悪の悲劇を。
「…死んだのか、俺は?ためておいた金も使えずに…なんて虚しい人生なんだ…。」
…それは、死んだ当人すらも知らない。
「そうだな。さて、」
「うわぁ!なんだお前は!」
「俺のことはどうでもいい。今から地獄に連れていく。こっちに来い。」
「は、離せ!どうして俺が地獄に…生きている間、どれだけ頑張ったと思っているんだ!」
「お前アホか。お前がどれだけ肉のために頑張ったかなんて意味がない。神様とメシアを信じなかったから地獄に行くに決まっているだろうが。霊界の常識だぞ。」
「…は?」
「ブフッ!その間抜け顔、本当に知らなかったんだな!まぁ、どうでもいいや。お前は永遠に俺たちが苦しませてやるよ!」
「…そんな!?助けてくれ!誰か!お金ならいくらでも…」
「お金で命が救えるか。第一もうお前が使えるお金なんてないだろうが。」
「…助けてくれ、誰かーー!………」
そう、彼らは知らなかったのだ。
人間には肉体が死んだ後「永遠な霊の生」がある、ということも。
霊を作るためには「神様を信じ、その御言葉に聞き従う」必要がある、ということも。
そのために神様は肉体を与えた、ということも。
作られなかった霊は地獄に行く、ということも。
「誰か、助けてくれ!神様ぁぁ…」
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「素直に、深く、面白く」がモットーの摂理男子。霊肉ともに生粋の道産子。30代になりました。目指せ数学者。数学というフィールドを中心に教育界隈で色々しています。
軽度の発達障害(ADHD・PD)&HSP傾向あり。
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