読書感想文:『Vtuberってめんどくせえ!』

おはようございます、satoです。
本日は烏丸英さんの作品『Vtuberってめんどくせえ!』というライトノベルを読んでの感想です。
カクヨムコンテスト6でキャラクター文芸部門特別賞を受賞し、書籍化された作品になります!

Web小説サイト「カクヨム」で掲載されています→こちらから

カクヨムはよく読んでいて、特にカクヨムコンテストの受賞作品は良作が多いと感じます。
たとえば、現在アニメが放映されている「連れカノ」こと『継母の連れ子が元カノだった』、最近アニメ化が決定された「いせれべ」こと『異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する 〜レベルアップは人生を変えた〜』は第3回カクヨムコンテストの大賞作品(ラブコメ部門、現代ファンタジー部門)です。
この2作と異世界ファンタジー部門大賞作の『公女殿下の家庭教師』はいずれも最新刊まで読み進めており、いずれ感想を書きたいと思っています。

そういうわけで、この作品も書籍化されたタイミングで読んだのですが、あらすじと試し読みをした段階で

『この作品は読まなければならない!』

という強いインスピレーションが来て、速攻で買いました。
試し読みの段階で「続きが気になる」という作品は多いのですが、読まなきゃ!と思った作品はこれが初めてです。

あらすじと作品の大まかな流れ

というわけで、以下、あらすじです。

高校を卒業したばかりの男子、阿久津 零。
 家族から家を追い出され、大学進学も勝手に辞退されてしまい路頭に迷っていた彼は、叔母である星野 薫子にスカウトされ、彼女が経営するVtuber事務所【CRE8】所属の男子Vtuberタレント『蛇道 枢』としてデビューすることとなった。

 が、しかし……【CRE8】に所属するVtuberは彼を除いてすべて女性ということもあり、箱推しファンからの反感を買った蛇道枢(零)は、初配信から大炎上という事態に見舞われてしまう。

 アンチコメや罵詈雑言に耐えながらも、生きるためにVtuberとしての活動を続ける零。

 でも、やっぱり、本当のことを言わせてもらえるのなら――
 Vtuberって、めんどくせえ!!

ファミ通文庫HP内作品紹介より

というわけで、最近話題になるVtuberの小説です。Vtuberは私も好きです。
この作品は、どちらかといえば「Vtuberとなる人の姿」を深く描写しています。

主人公の阿久津 零はVtuber事務所【CRE8】の二期生・男子Vtuber『蛇道 枢』としてVtuberデビューするのですが、彼を除く所属Vtuberがすべて女性であったためにデビュー直後からネットで炎上してしまいます。
そんな中、同じく二期生の『羊坂 芽依』を担当する入江 有栖(表紙のイラストの子です。左側の黒髪の子が有栖で、右側の金髪の子がVtuberの芽依です)とのコラボ配信をするという話が出てきます。
このコラボに双方ともに積極的に動いていき、少しずつ準備を進めていくのですが、コラボの予告を見たファンから歓迎されるどころか多数の反対ツイートが…これによってさらに炎上してしまいます。
さらに、個人勢(企業に属さず、個人でVtuber活動している)Vtuberアルパ・マリが現れたことによって事態はさらに”めんどくせえ”方向に進んでいく…というのが、確か試し読みで読める内容(だったはず)です。

!ここからは作品のネタバレを含めた感想になります!

作品の感想と、私が感じたこと

Vtuberってめんどくせえ!
総評
 (5)
テーマ
 (5)
センシティブ度
 (0.5)
つらい度
 (2.5)

総評というのは文字通り総じての評価です。

テーマは取り扱っているテーマのオリジナリティが高かったり、視点が他と違うと高評価になります。
この作品は結構テーマとか見ている視点が良く、しかもそれに対して深掘りされているなぁと感じました。

センシティブ度は高いほどセンシティブな描写が高くなり、子供には勧めにくくなります。
この作品は(第一巻では)センシティブ描写は(ほぼ)なく、いろいろな人に勧めやすいです。

つらい度というのは「読んでてつらいシーン」の度合いで、グロかったり、鬱展開があったりすると高いです。
この作品の場合、先程書いたアンチコメや途中の展開で個人的にキツイところがあったので、2.5としました。
特にツライと感じたのが「枢と芽依のコラボ中止前後のファンからのコメント」でした。有栖が感じた感覚は私も同じく苦手としている感じで、だからこそつらかったかもしれません。

作品のテーマについて

まず、私が最初に『読まなければならない!』と感じた理由なのですが、それは率直に言うと、私自身が感じていたことと状況が似ていたからです。
私自身もVtuberが好きで色々な人の動画を見ていたし、その中で様々な炎上事件にも触れました。そして、心がしんどくなったこともありました。
だからこそ、この作品を読むことによって炎上が起き、悪評されている中で如何にしてその誤解を解いていくのかという問題に対する答えのヒントが得られると思ったのです。

実際、主人公である零は何か悪いことをしたわけでもなくただ「今まで女性だけだった事務所からデビューした男性」というだけで叩かれていたわけです。これと同じように悪いことをしたわけでもなく、周りの状況によって(事件を起こした人と似ている、勘違いされる、冤罪など)悪評されるということは起こりえます。ネットでは特にそうです。
動くたびに見たくもない悪評・罵倒が次々と送られ、誰も自分に期待していない、そういう状況の中で如何にして主人公である零がVtuber活動を続けるのか。それには強い「理由と目的」…言い換えるとが必要になってきます。
彼はそれを、同僚である有栖の「夢」から見出します。

この作品はVtuberをテーマとしていますが、ネットで活動するあらゆる人が直面しうる問題と向き合い、それに対して如何に対応し、解決していくかが明瞭に描かれています。
それと同時に、特にこの第一巻ではネットで活動するときの危険性…誤解によって自分たちが炎上を引き起こすことや二面性もまた如実に描かれています。
そういう意味で、ネットで活動する人にとって、とても大事なことを教えてくれる作品だと私は感じました。

キャラについて

次にキャラクターについて。簡単に言うと私は有栖も零も結構好きです。現実で配信していたら配信を追いながら応援してそうです。

まず、有栖は「強い自分になりたい」という夢を持ってVtuberとして活動しています。かなりつらい過去を持っている彼女が、それでも「強くなりたい、強く在りたい」という願いを持って、足りない中頑張る姿は、確かに応援したくなります。
私自身も似たような経験があるからか、割と共感できることが多いんですよね…。

そんな彼女を見て「夢を叶えるために頑張る人を守りたい」と願って動く零。
悪評が多くある…というか悪評しかない中で、前に出て事件を収束させようとする彼はめちゃカッコいいです。
真摯にファンや仲間と向き合い、助けていく姿によってだんだんと悪評が覆っていくのです。

で、それ以上に、お互いがお互いの弱さも、過去も全て話し、共有したからこそ生まれる強い関係性…互いが互いを尊敬し、尊重する。その関係は、恋人とも、友達とも違う「尊い」なにかです。あえて言葉にするなら「戦友」、あるいは「パートナー」でしょうか。
これをファンは「くるめいてぇてぇ」というんですよねぇ…。

あと、事件を引き起こしてしまったアルパ・マリ。彼女も悪い人間ではなく、純粋な心配と誤解から炎上を引き起こしてしまったのですが、彼女も彼女で事件を起こしてしまったことと向き合いながら、真摯に頑張っていきます。それについては短編で書かれています。

このように、この作品は出てくるキャラクターが根っからの悪人である、ということはあまりなく(出てもほんの数人)、ただ事件が起きて、悪として裁かれて終わり、でなく、反省して立ち直っていく姿も描いています。

総じて、キャラクターが完璧な超人でもなく、完全な悪人でもない「等身大の人間」として、魅力的に、生きているように書かれているのがこの作品の魅力の一つと言えるでしょう。

自分が感じたこと

自分がやりたいと思ったことだったとしても、それを実際に成すときには、苦痛となることがたくさんあります。

Vtuberという職業はやりたいことをやってお金を稼げる仕事と認識されがちですが、実際には多くの「目に見えない”めんどくせえ”作業」があります。自分がやれば終わる作業だけなら良いのですが、相手を伴う作業…たとえばファンとのやり取りとか…もあり、自分がやってもうまくいくとは限りません。

信仰だって、神様にお祈りして終わり、というわけでなく、御言葉を聞いて考え、祈って、実践して…初めて実体となります。

これはどんなことでも同じで、楽しい、楽、ということはありません。むしろ辛いことのほうが多いかもしれません。時には心が折れてしまうこともあるでしょう。

では、そんな辛い、”めんどくせえ”、心が折れてしまう…そんな中でも頑張れるのはどうしてなのか?

この作品では夢と支えてくれる人によって立ち上がる、という一つの答えを見せてくれます。

辛いことがあっても、それを通して成したいことがある。だから頑張れる。
むしろ、成したい目的を忘れてしまえば、行えなくなる。むしろ、大変でないことも大変に感じるようになる。

でも、だからといって心が折れてしまうことがある。そういうとき、支えてくれる人がいるから、また立ち上がれる。

4:9ふたりはひとりにまさる。彼らはその労苦によって良い報いを得るからである。 4:10すなわち彼らが倒れる時には、そのひとりがその友を助け起す。しかしひとりであって、その倒れる時、これを助け起す者のない者はわざわいである。 4:11またふたりが一緒に寝れば暖かである。ひとりだけで、どうして暖かになり得ようか。 4:12人がもし、そのひとりを攻め撃ったなら、ふたりで、それに当るであろう。三つよりの綱はたやすくは切れない。

伝道の書4章9-12節。最近この聖句を本文とした御言葉が出ていました

生きるのがしんどくなるこの時代に対して、誰しもが付き合わなければならない、荒れることも多いネットに対して、どのように向き合い、生きて行くのか。
この物語は、上の問いに対しての一つの道標となりました。

第一巻の続きについて

さて、最後に第一巻の続きの展開について書いていこうと思います。

まず、零と有栖は【CRE8】の二期生『蛇道枢』と『羊坂芽依』としてVtuber活動をしていますが、この二期生は全部で5人います。
第二部では『花咲たらば』が、第三部では『リア・アクエリアス』と『愛鈴』が、それぞれ話題の中心となっていきます。
(余談ですが、アニメイト購入特典のリーフレットSSにはこの残りの3人が出ています。ある意味で貴重な姿が見られますので、もし気になりましたら購入をおすすめします)
さらに、先輩である一期生や他事務所のVtuberも出てきて、様々な物語と事件(と炎上)を生み出していきます。

個人的には、実は第三部がとても良かったです。
その理由は私自身が過去直面したVtuberの炎上事件と重なり、そして「本当はこうなってほしかったんだ」と気づかせてくれたからです。この第三部のお陰で、ようやく心の中に残っていた傷が解けてきました。そういう意味でもこの作品にはとても感謝しています。

これと関連して、実を言うと芽依や枢と並んで、愛鈴が私の中で推しなんですよね。
その理由は、またどこかで書きたいなと思っています。おそらく『推し分析』の時に。

また、Web版では様々な短編が書かれています。本編が炎上事件と向き合う割と重い内容なのに対して、Vtuberとしての普段の活動とかファンの活動とか、普段の日常とかが書かれている読みやすい内容となっています。

Web版では現在第五部が進行中ですが、この回も結構ハードな内容となっています。
毎日更新中ですので、ぜひぜひ読んでみてください!

以上、『Vtuberってめんどくせえ!』の読書感想文でした!

余談:ちょっとした証

実は、この記事を書くにあたって、すでに電子書籍で買ったのですが「せっかくなので紙書籍でも買おう」と思って、それなら特典も見てみたいなぁ(特典が売れると作者さんにもとても良いのです)と思って、応援の意味も込めてアニメイトで購入することにしました。

この作品は3/30に発売されていて、それから5ヶ月経った後で残っている可能性は低いのですが、作者さんから「残っている可能性があるかも!」というツイートがあったので、神様に「もしあったらせっかくなので特典付きで…!特典があったら買います!」とちょっとお祈りして見てみたら、なんと一個書籍が残っていました。
しかし、見てみると普通の表紙だったので「あ、やっぱりなかった…」とちょっと凹みました。
(意外と言われるかもしれませんが…)実はこういうお店で買ったことなかったので、買おうかどうしようか…と迷っていましたが、「買ったら良いんじゃない?」というなんとなくの方向性があったので、思い切って買うことにしました。

並んでいる途中で改めて見てみると、一番上とその次になんか隙間があるのを見つけました。よくよく見てみると「イラストの周りがピンク」だったのです!そう、私が普通の表紙と思っていたのは、実は特典のリーフレットだったのです!

そんなわけで、無事に特典を購入できた私は、(その後なんとなく気恥ずかしくなり、すぐ隣のブックオフで「言い換え図鑑」という今の私に役立ちそうな本も購入して)満足して帰ったのでした。

何が言いたいかって言うと、自分では「こんなことに働きかけるのかなぁ」と疑問に思うようなことでも、神様が働きかけるということもあるんです。それくらい神様は身近であり、神様が私を愛してくれているんだ、というお話でした。本当に感謝します。

この記事を書いたブロガー

sato
「素直に、深く、面白く」がモットーの摂理男子。霊肉ともに生粋の道産子。30代になりました。目指せ数学者。数学というフィールドを中心に教育界隈で色々しています。
軽度の発達障害(ADHD・PD)&HSP傾向あり。